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 観音院 寺子屋「創作愛好会」

     寺子屋 「創作愛好会」 掲示板(皆さまもご自由に投稿してください)
     「掲示板」に新しい作品を掲載しました。(4/24)


−−寺子屋「俳句教室」の作品集(98.3まで)−−
季節の一つも探り出したらんには後世によき賜(たまもの)
『去來抄』芭蕉のことばです。
 歳時記のある生活をしてみませんか。歳時記は美しい日本
語の宝庫です。季語がちりばめられています。
 俳句では「山眠る」といえば冬の季語、「山笑ふ」といえ
ば春の季語。
「山笑ふ」------、一つの季語のなかに先祖の伝承、言霊を
感じるのです。先人は季語を創生し一つ一つ積み重ねて我々
に伝えてくれたのです。美しい自然、四季のうつろい、生活、
行事、動植物--、頁をめくるとき、花の声、鳥の歌がきこえ
てきます。現代の俳人も季語を創造しています。
 中村草田男は王安石の漢詩から「万緑の中や吾子の歯生え初むる」
「万緑」を季語として定着させ、加藤楸邨は「寒雷やびりりびりり
と真夜の玻璃」と詠み、「寒雷」を、富安風生は「何もかも知って
をるなり竈猫」「かまど猫」を歳時記に加えました。
 例をあげれば際限がありませんが、それぞれ一人一人が美しい日
本語の創造を追求して来たものの集大成が歳時記なのです。
「千里の道も脚下にはじまる」季語の一つも発見して、浩然の気を
味わいましょう。                  高橋昭三

 高橋昭三先生の四月の俳句
    座布団のやうな鰈ぞ春岬
    鍵穴に鍵をさし込み花疲れ
    蛤のみな似ています濡れゐます
    畦侘びし雨のつくしの茎の色
    ふるさとの雀隠れとなりしかな

 四月の主な季語の紹介
    弥生・春の日・春光・春岬・春燈朧月・桜・八重桜・
    夜桜・落花・花見・花疲・春潮・磯遊・浅蜊・蛤・
    汐まねき・若草・豆の花・シクラメン・土筆・沈丁花・
    木瓜の花・杉の花・雀の子・雀隠れ
    ※「雀隠れ」は、「草々が雀が隠れるほどに伸びた景」

  寺子屋俳句教室の作品 −三月十四日土開催−

   春の風早々背負ふランドセル
   干しものの手を休めゐて初音かな
   ままごとの卓上飾る桃の花      西田 治子

   うぐひすや仏はいつもそばにゐて
   仮設屋の屋根打つ音や春時雨
   チューリップ赤白黄色咲きゐたり   佐伯  元

   花辛夷恋知り初めし頃想ふ
   あがるとも思はせ振りの花の雨
   春燈白き封書の女文字        畔倉 慶泉

   一隅の水仙ひらき初めにけり
   野葡萄や空をおほひて枯かずら
   寄せ植えを雨に打たせるやぶこうじ  政岡婦美代
             

   ぷくぷくのあかん坊抱けば春匂ふ
   山盛りの春を並べて野菜市
   淡色のハーモニー奏でて山笑ふ    吉野美千恵

   おくれ毛を連れてふるさと春の風
   肩組みて男泣きして冬五輪
   過ぎ行きてより香のありし小白梅   井上 静昌
             

   お薄にて和菓子の雛いただけり
   春浅し木立すかして明けの星
   懐石の透けたる汁のつくしかな    山下 朝子

  小学生の部

  とんとんと桶やの音よつくつくし  高橋まゆみ

  散歩する春のつつみのたのしくて  中原ひろみ

		
		
俳句教室98年3月  舞ひ舞ひて玻璃戸の棧に積もる雪  くりす  かれこれ四十年も前、私は療養所内の俳誌「春雪」 というガリバン刷りの編集に携わっていたことがある。  この一句は、初老の作者が降る雪を見ながら、個室 のベッドで詠んだものである。当時の個室入りは、今 とちがい、死の近いことを意味していた。 作者とは、句稿集めに、二、三度、お会いした程度の ご縁であった。  「春雪」誌上の片隅に、誰からもかえりみられることもなかった この一句が、私には、二月になると妙に思い出されてくる。  そのしづけさ、清らかさ、やすらぎ、作者は、すでに生死を超え た放下(ほうげ)の境地にあったのであろうか。この句、写生の極致 といえよう。                      昭三  高橋昭三先生の二月の俳句      海苔掻女襤褸の如くに這ひ上がる      いぬふぐり植物園の片隅に      空港の柵にもたれて下萌ゆる      旅客機の窓ほの暗き春夜かな      きのふけふあすも雨降る末黒野に  二月の季語の紹介     春・春立つ・寒明・針供養・余寒鶯・雪なだれ・春菊・     いぬふぐり・猫柳・梅の花・下萌(したもえ)     初音・春の風邪・凍返る・初午(はつうま)・     末黒野(すぐろの)・白魚舟・海苔・公魚(わかさぎ)  寺子屋俳句教室の作品(98.2/14開催)      橙や三代揃ふ祝膳      何のため余生目論む初暦      冬帽子肌色混じるメトロかな                畔倉 慶泉      エルニーニョけだるき午後の冬薔薇      日めくりに雪の詩あり幼稚園      寒の入息づく蕾知らぬげに                井上 静昌      物売りの声にさそわる年の市      朝日さし黄梅一つほころびぬ      写真には子ら成長の賀状かな              山下 朝子      初もうで元気元気と声を出し      初荷式ねぢり鉢巻するもゐて      一年の無沙汰をわびて賀状かな               佐伯  元      実南天入院の主待ち侘びぬ      軒下の蜂の巣落す日短か      シクラメン歩けぬ友を見舞ふなり                西田 治子      香草をちぎる厨房十二月      大掃治ふいのお客にあわており      よろこびを語る卓袱台春の酒                政岡婦美代      年玉に手を出す夫に酌をして      うたた寝の去年今年とはなりにけり      差し出しの二枚減りたる賀状かな                吉野美千恵   *** 小学生の部 ***    雪だるまつくりましょうよつもったら                  高橋まゆみ    ふきのとうつみに行きましょかごさげて                  中原ひろみ    鍋の中緑鮮やか草の粥    七草に愛情こもる祖母の味                  井上こすも
   主な一月の季語のご紹介   一月・去年今年(こぞことし)・雪・元旦・初鶏   恵方(えほう)・賀状・初便・年酒・重詰・田作   手毬歌・門松・鏡餅・春著(はるぎ)・福引・羽子板   初笑・初箒・初荷・初髪・御用始・寒詣・寒行   春の七草・凍蝶(いててふ)・萬両・千両・粥柱   初観音・初薬師・風花・雪女郎
   去年今年貫く棒の如きもの                 高浜虚子  中国唐代、高官の韓退之(かんたいし)〔韓愈=かんゆ〕が馬車に 乗って市中を行くうちに、一人の男が馬車に突き当たった。退之が とがめると、賈島(かとう)と名乗る男は、詩を案じていて失礼しま した、と詫びた。どんな詩句かと問われて、 「鳥ハ池汀ノ樹ニ宿リ、僧ハ推ス月下ノ門」に「僧ハ敲(タタ)ク」 がいいか、「僧ハ推(オ)ス」がいいかと迷っていたと。  退之は直下に「僧ハ敲ク」がよいと言った。この故事から「 推敲 (すいこう)」ということばが生まれたことはよく知られている。  のちに、賈島(かとう)も大詩人となり、「浪仙(ろんせん)」と呼 ばれて尊敬されたという。  尚、漢詩の世界では十二月三十一日(除夜)に「詩ヲ祭ル」とい うことをするそうである。自分の一年間に作った詩を集めて、浪仙 の霊に供え、詩力を乞うた。そして浪仙の霊は「浪仏」と呼ぶ。  中国の文人がいかに一字を尊んだかの故事。私たちも浪仏に一花 を供えて、新しい年を迎えて俳句に精進したいものである。                           高橋昭三   寺子屋俳句会の作品紹介      湯豆腐の湯気の向こうに笑顔見る      日向ぼこ母の背中の老い給ふ      裏庭の紅葉も散りてしまひけり                     佐伯  元      もみづるや宮島巡り琴聞きぬ      七かまど安産願ひ石仏      秋茜しばし憩ひて諭吉邸                     政岡婦美代      無人市白菜漬けを迷ひをり      冬の夜も蚊取り線香傍に置く      祖谷川の沈む落葉に平家見る                     吉野美千恵      暴走の落葉舞ひ揚ぐ大入日      頬赤き一輪車の子小春風      しぐれ過ぎ雲をこぼるる夕日かな                     畔倉 慶泉      バス停の俄ガイドや日向ぼこ      雪蛍風に抱かれて眠りしか      「おすそわけ」と白菜一つ置かれをり                     井上 静昌      山柿のたわわに実り鳥を待つ      真白なる寒菊のぞく岩場かな      山城や紫式部中腹に                     山下 朝子      鉄塔の簪さして山粧ふ      虹の中落葉踏み踏み寺参り      菊花展これぞ名うての技なれや                     西田 治子      枝に来てあれは小雀か四十雀                     高橋八重子      小学生の部      元旦の土手にも月見草咲いて                  高橋まゆみ      ばあちゃんの羽子板もらいおもたいな                  中原ひろみ      雪んこを追いかけて行く登下校       本の中おばあさん手袋編んでいる                  井上こすも
十一月の俳句教室  天国はもう秋ですかお父さん  こころ優しい句、小学校五年生塚原彩さんの作品です。  子供俳句は今、全国的なひろがりをみせ、芭蕉まつり、一茶まつ りなどの小中学生俳句大会には十万人以上の応募があるそうです。  大人の忘れかけているもの、それを子供たちは俳句にしています。 虫と話し、草木と語り、雲や星に囁きかける、ゆたかな感性、慈悲 の心で俳句しています。寺子屋俳句教室「小学生の部」も観音院か ら大きく発信することができたらいいなと思っています。  昭三   高橋昭三先生の十一月の例句
     宿六の大根引く日も出てゆけり      綿虫の他郷の空にきえしかな      にはたづみ小春日和の蜻蛉かな      木枯の吹く夜は家内つどひよる      親子鹿いつか別るる四肢もてり    十一月の主な季語のご紹介   立冬・初時雨・初霜・口切・大根・山茶花・八手の花・   七五三・麥蒔・酉の市・鷲・綿虫・鷹・隼・小春・冬日和   帰り花・落葉・木の葉髪・冬紅葉・木枯・柴漬・冬構・鹿   亥の子・石蕗の花・夕時雨・小夜時雨・勤労感謝の日・網代   10月11日寺子屋俳句会の作品      菊薫る童地蔵のあどけなさ      風静か一夜泊りのちちろ鳴く      菊の花酢の物にして人待ちぬ                    井上 静昌      新涼や宮司の御詞岩にしむ      食卓に草のみ飾る雨月かな      栗ころろ後追ふ子らのはしゃぎ声                    西田 治子      狗尾草穂波を揺らす故郷かな      林檎撰り丸かじりする菩薩晴      石榴実にどこまで高き空の青                    山下 朝子      畦道の案山子一人で淋しそうに      声援のわが孫走る運動会      逝きし友の墓前にささぐ秋の花                    佐伯  元      神無月わたしも華の知命かな      靴音のヒールの高き秋の朝      わが胸を突き刺す如し月光は                    吉野美千恵      白萩や伽藍の上の白き雲      秋茄子を漬けて女のティータイム      しばらくは濡れてもみたし萩の寺                    畔倉 慶泉      空の青コスモス揺れる午さがり      木犀の香り流れる辻の風      柿たわわ日毎に色の濃くなりて                    高辻さくら      鮎の宿いよよ瀬音のたかまりぬ      聞き齧り月下美人の花料理      コスモスに阿武山麓の近く見ゆ                    高橋八重子      赤まんま咲いて兄の法要忌      お堂中笑顔も見える百羅漢      葉がくれのオンブバッタの愛しさ                   政岡婦美代       *** 小学生の部 ***    いちじくは溝があるからとれません    こうろぎは土手刈られても鳴いている     中原ひろみ    ぢいちゃんのお庭のみかんすっぱいな     高橋まゆみ    猫じゃらし手にして道草してしまう      中原みゆき    コスモスに香りがつけば最高ね    秋くれば俳句楽しく作れそう         井上こすも
    十月の俳句教室  ある日、熊さんが一句出来たと、次の句を村の和尚さんに見せま した。 「人の田へ追うてやりたや稲雀」。 すると和尚は、そんな心ではいけないと、一字なおして、 「人の田の追うてやりたや稲雀」。  やりとりを見ていた村の隠居は、そんな善人はめったに居ないと、 更に一字を訂正。 「人の田も追うてやりたや稲雀」。 一つの道話ですが、俳句では笑ってばかり居られません。 「へ」「の」「も」の一字が決定的に句意を左右しています。 「一字のいのちを大切に」ということです。     昭三   高橋昭三先生の十月の例句      網棚に忘れてありし朱欒かな      冬瓜をわかちて句会閉じてけり      とりみちの鳥も渡らずなりにけり      さかな屋はゴム長干して菊日和      阿武山の空あるかぎり赤とんぼ   十月の主な季語のご紹介    秋高し・天高し・山粧ふ・秋の風・秋の声・初紅葉・    茸飯・新米・新酒・案山子・ばった・落ち鮎・渡り鳥・    木の実・林檎・梨・柿・朱欒(ザボン)・野菊    どんぐり・草の実・蜜柑・いのこづち・紅葉狩り    冬瓜・菊日和・赤とんぼ・秋の暮・夜寒・十三夜  寺子屋俳句教室の作品       大声で月が赤いと言ふ息子       細る手に葡萄食べよと乗せる夫       邯鄲の声持ち帰り夢の中                   吉野美千恵       秋の雨ガラスに走る点と線       今日も又われ引きよせて曼珠沙華       短冊の裂けし石榴に紅刷きぬ                   井上 静昌       新松子顔をくづして泣く子抱く       男一人黙してたぐる裏見葛       秋草や訛りはんなり駅舎口                   畔倉 慶泉       葉にすがり空蝉きくや蝉時雨       夏終る抱き合ふ球児泥塗れ       新涼や網戸に虫も来ずなりぬ                   西田 治子       ひらひらと黄色の小さき秋の蝶       乱れ咲くコスモスの茎しなやかに       あかつきのいよいよ滋し蟲の声                   山下 朝子       行く月日惜しむが如く蟲が鳴く       名月に我が生きざまを振り返へり       秋刀魚焼く香り私を迎へけり                   佐伯  元       葉生姜の草に隠れてしまひけり       椋鳥の柿といふ柿食ひ散らす                   高橋八重子       一雨が欲しや紫陽花小さく咲き       床の間に夏菊活けて静心                   廣砂ナツ子       *** 小学生の部 ***     ぢいちゃんの近くの原はひがん花    高橋まゆみ     川土手のすすきたくさんつみました   中原ひろみ     背がのびて運動会が楽しみだ     夕焼けや地球は赤く火星青       井上こすも
    九月の寺子屋「俳句教室」  名月の晩でした。芭蕉は旅の道すがら、庄屋の庭先で、七、八人の 俳句連衆に出会い、しばらくその様子を見ておりますと、運座の一人 が「坊さん、なにか用かね」とたずねました。  芭蕉は「いえ、みなさまの優雅な俳諧につい見惚れて、失礼を致し ました」とお詫びして立ち去ろうとしました。  すると主らしい人が、「お前さんも歌心があるのだろう。一句詠ん でみないか」と短冊を差し出されました。  酔興におされて、芭蕉は「三日月の」と詠み始めました。  それを見ていた連中は大笑いになり、しばらくは笑いが止みません でした。芭蕉はおもむろに 「三日月の頃より待ちし今宵かな」 と詠み上げました。笑いははたと止み、居並ぶ連中のなかには盃を落 とすほど吃驚(びっくり)、感じ入ったという挿話。  示唆に富んだ話だと思います。              昭三   高橋昭三先生の九月の例句      がちゃがちゃに一段落のペンをおく      夜なべ妻京都につれて行けといふ      どの道を行くもふるさと竹の春      たべをへて美しかりし葡萄かな      待ちながら小さな駅に棗噛む  主な九月の季語のご紹介  ・七草(萩・尾花・葛の花・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)  ・枝豆・十六夜(いざよい)・鬼灯(ほうずき)・葉月潮  ・鈴虫・こほろぎ・轡虫(くつわむし=がちゃがちゃ)  ・蜻蛉(とんぼ)・初雁・秋刀魚(サンマ)  ・名月・白露・夜なべ・秋袷・葡萄・芋  ・コスモス(秋桜)・秋の雲・霧・桃  ・あけび・棗(なつめ)の実・吾亦紅(われもこう)  ・竹の春(竹の新葉の盛りである 陰暦の八月をいう季語です。)  寺子屋俳句会の作品紹介     大粒の梅と辣韮今年漬く     臥して姑花に水かけ夏の朝     木漏れ日の谷水供ふ先祖墓                  吉野美千恵     七夕に百座法要厳かに     夕顔の帰宅迎へる白さかな     朝顔にご機嫌如何とご挨拶                  佐伯  元     雲流れ同じ空かとひろしま忌     蝉しぐれはたと上衣の纏はりぬ     遠き日の脳裏に遊ぶ柿若葉                  井上 静昌     夏休み子らの声きく夕餉なり     長雨のあとの老鶯軽やかに     風ありて仲良くダンスの青田かな                  西田 治子     向日葵がみなお辞儀する午後三時     猛暑とて掃除に励みランランラン     台風に雲は駆け足東から                   山下 朝子     白地着る明治の父の粋に見ゆ     ねむの花午後の陽かげの濃くもなく     夜の雷明日の段取り決めかねる                   畔倉 慶泉     わが庭の今年もつけし青蜜柑     小判草一輪ざしがたのしくて                   高橋八重子  *** 小学生の部 ***    葉をつめばハーブの匂いしてくるよ   高橋まゆみ    プチトマト庭にたくさんなりました   中原ひろみ    線香の煙にむせる墓参り    氷菓子ないとよけいに欲しくなる    井上こすも
      八月の寺子屋「俳句教室」     手をあげて足を運べば阿波踊り  私は、この頃になると、我が師風三桜の句を思い出します。俳句 は、このように自然体で詠むのだよと言っているようです。  芭蕉さまも「俳諧(はいかい)は三尺の童にさせよと」と言って おられます。いつも子供のような心で句を作ることと、巧者にはし ることとを戒めております。こころすべきことです。    昭三  高橋昭三先生の八月の例句    里の秋一番星は森のもの    日ノ御碕夏も終りの浪がしら    何色の口紅さして織姫さま    川撓み流灯たわみ行きにけり    西瓜食ふ父の反っ歯をほめにけり 主な八月の季語のご紹介   星月夜・天の川・流星・七夕・牽牛・織女・花火・   鳳仙花・おしろい・朝顔・立秋・夏終る・   西瓜・カンナ・稲の花・桐一葉・   走馬灯・迎火・送火・ひぐらし・法師蝉   掃苔(そうたい)=墓石の苔を掃きとることで、墓参りのこと。   流燈(りゅうとう・とうろうながし)=ご精霊のご供養のため   川や海に灯火を流すお盆の習わし。燈籠流し。   地蔵盆(じぞうぼん)=八月二十三日、二十四日の地蔵菩薩さ   まの縁日(えんにち)にお参りする習わし、子供の無事成長を祈る。   生身魂(いきみたま)=今在る父母に祝い物を贈ったり、飲食   を接待するお盆の習わし。お盆の先祖供養とともに、現在生きて   いる両親に孝行し、長寿を祈り、感謝の心を表す尊い習わしです。  寺子屋俳句会の作品のご紹介      向う側日傘の女が会釈して      日めくりの折り返し点夏越祭      通りがけプール授業の燥ぐ声                     吉野美千恵      向日葵の陽に顔向けて一斉に      つくばひの滴る音や昼寝して                     佐伯  元      一粒の青ほほづきや何想ふ      半夏生鳴る風鈴の今昔      闇深しどくだみの花寝もやらず                     井上 静昌      濡れ紫陽花宝石箱を覗くよう      百合の香の便りに入りて届けけり      鈴生りの枇杷を横目に今日も過ぐ                     西田 治子      プロペラの爆音消ゆる雲の峰      捨てかねてヒールの高き白い靴      梅雨晴れてゆたりゆたりと雲の旅                     山下 朝子      ひたすらに黙して刻む胡瓜かな      打水の香の中に待つ来ぬ人を      雷に右往左往の猫の顔                     木村 浩子      くちなしの白に語れぬ想ひあり      紫陽花やうつろふことの多き日々      ゆる抜きの満濃池や梅雨旱                     畔倉 慶泉      *** 小学生の部 ***    人形のうちあげられて出水あと      高橋まゆみ    いちじくのなかなか熟れずまちにまつ   中原ひろみ    鱧(はも)買いに行けばおばさんお見とおし    メダカの子流されないかと雨の中     井上こすも
         七月の寺子屋「俳句教室」     『文台引下ろせば、即反古也』これは芭蕉のことば    です。「私たちの作る句は、出来てしまえば、くず篭    行きの駄作ばかりだ」と。     しかし、逆に、句作にああでもない、こうでもない    と苦吟する。     そのプロセス(過程)のなかに、尊いものがある。    その精進が「あすの佳句につながる」とも教えている    ようです。                 昭三  高橋昭三先生の七月の例句      括ること吾子知ってゐぬ兜蟲      したたりてもとの滴りにはあらず      羅のいつかうしなふものつつむ      釣葱ひつぢをんなにたつをとこ      ふるさとの三和土に坐り浮いて來い   主な七月の季語のご紹介      百合・月見草・夾竹桃・梅雨明・青田・夕立・雲の峰・      雷・夏座敷・虹・扇・日傘・胡瓜・麥酒・心太・冷奴・      兜蟲・金亀子・天道虫・羅・滴り・浴衣・ハンカチ・      端居・打水・髪洗ふ・釣葱・夜店・冷麥・沖膾・風鈴・      金魚玉・水鉄砲・浮人形(浮いて来い)・炎天・夕焼      油蝉・ヨット・水泳・海月・夏休・香水・      夕顔・向日葵・落し文  寺子屋俳句会の作品ご紹介      朗々と読経の尼僧や春燈明      母の日や一筆添えて白日傘      薫風や梳る娘の手の白さ                    畔倉 慶泉      山鳩のくぐもる朝や万緑や      反り返る五層の塔や梅雨に入る      古寺巡り若葉青葉の京の旅                    政岡婦美代      走り梅雨庭の緑を濃く染めて      沿道を丹精込めし葵咲き      サフィニア咲き乱れたり一斉に                    佐伯  元      通り雨山懐の水田かな      肌寒き見物客や花田植      五月雨に迷ふ緋鯉や太田川                    井上 静昌      風五月「三矢の訓跡」語る親      みどりなす牧に寄り添ふ親子馬      四半世紀待ちし甲斐あり花蜜柑                    西田 治子      夏の朝どこかで鶏を飼っている      アロハにて南の駅の更衣      燕の子それ落ちるなおちるなよ                    山下 朝子      夏帽子流行の服のシースルー      傷暑く日々好日に気付きけり      友来たる茄子の糠漬もてなして                     吉野美千恵      桜の実少女恥じらふ頬の色      一つまた増えし胃の傷梅雨に入る      胃の傷に辛きを好む夏大根                     木村 浩子      父の日に思ひは遠きアマリリス      目に映えて緑の中の柿の花      鈴蘭のほのかな香り恋に似て                     高辻さくら      暁の雲ひろごりて桐咲けり      松蝉や寝釈迦の足を伏し拝む      いにしへの柳思ほゆ雨蛙                     打越 紫香      *** 小学生の部 ***    雨になりあじさい咲いてきのこ出る    井上こすも    さくらんぼもいでくださるおばあさん   高橋まゆみ    川流れおててつないでホタル見に     中原ひろみ    てのひらのホタルはなしてやりましょう  中原みゆき    花あやめ昨日も今日も雨がふる      高橋かずこ
      六月の寺子屋「俳句教室」     ある句会で、わが師は「人生、日々絶句」と、    私たちのマンネリ化している句作姿勢を叱って    くれた。あすという日は、だれもわからない。    だからこそ、私は今日を楽しく俳句するように    なった。    「きのふの我に飽くべし」、日々新たに、十七    音を口遊(ずさ)んでいる。     生きて、生きた証の一言半句も残すことなく    過ごす人生など、いかにも口惜しいことである。                       昭三    高橋昭三先生の六月の例句        つけぶみの記憶にゆすらうめありぬ        鹿老渡の青芒もて指切れり             まひまひの恋といふ文字かくやうに        ふるさとや蓴の舟のあるばかり        離れ鵜のもう戻るなよもどるなよ        空っぽになりても匂ふ蛍籠    主な六月の季語のご紹介   杜鵑花(さつき) 花菖蒲 花橘 短夜 花橘 柿の花    十薬 鈴蘭  瓜の花 梅雨 五月雨 濁り鮒 初鰹    亀の子 蝸牛 雨蛙 河鹿 さくらんぼ ゆすらうめ    桑の実 紫蘇 青芒 夏大根 早苗 水澄 早乙女    アマリリス 蛍 目高 萍 蓴 鮎 鵜飼 鰺 黒鯛   夏至 草苺 夏帽子 ほととぎす  寺子屋俳句会の作品ご紹介      囀りや旅立つ子の荷積み上げし      往き先を告げぬ旅空百千鳥      初産を終へし瞳に風光る                     木村 浩子      彗星の位置確かめて花の宴      雨去りて花の道ゆく授賞式      六十路とて出会ひときめく春ショール                     畔倉 慶泉      春寒やヘール彗星視むと佇つ      薫風に電車現れしよ高架橋      瞑想に居る僧正に風薫る                     打越 紫香      来て友と江波山桜の縁かな      友と居て抹茶うれしも春の暮      春惜しむ花の下にも車椅子                     井上 静昌      花曇り演じ女は惜しまれて      結ひ近く姪の振袖花吹雪      故郷の緑なす山父母眠る                     吉野美千恵      江波山桜心和みし苔むすも         風吹かばひらりほらりと梨の花      突然にチンドン屋舞ふ春の午後                     山下 朝子      花吹雪一日髪ざしせしままに      雀の子親の影追ひ啄めり      花吹雪払ひて歩む女の子                     西田 治子      吾が孫の足まで届くランドセル      庭木刈りさわやかな風抜けて行く      山つつじ松の木陰にそっと咲き                     佐伯  元      冬没日一人ギターのカルカッシ      いつの世も糠床混ぜて春の宵      花吹雪帯となりたり母と踏む                     政岡婦美代      亡き人の残せし牡丹ひらきけり      傘添えて牡丹のかほり今日もあり      童謡を歌ふ老い人春の風                     高辻さくら   *** 小学生の部 ***      父さんと散歩してたらアッわらび      衣がえ体も軽くうれしいな      きんれん花あざやかな色庭めだつ   井上こすも      母の日のもうすぐ花は何の色     中原ひろみ      母の日の後の父の日さみしそう    高橋まゆみ

>俳句のミニ知識・作品鑑賞室(7−12月)・俳句雑誌「鮎」



高橋昭三(たかはし・しょうぞう)先生−
  俳句歴50年・各所公民館の俳句講師歴任、俳句雑誌『鮎』主宰
  ご住所 広島市安佐北区可部南4ー5ー47
  お電話 082・814・9154〔ファクシミリ兼用〕

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