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歳時記 十二月(師走)

納(おさ)めのご縁日

 十二月のご縁日(えんにち)は「納(おさ)めのご縁
日」といわれます。十二月を無事に納めて頂き、お正月
を縁起良く始めさせて頂くためにご参拝下さい。
 年末は特に、なにをするにも時間にゆとりをもってお
暮らし下さい。事故や怪我の無いように、体調を整えて、
風邪を引き込まぬようにお大事にして下さい。
 温かい食事時には、気分も少しほっとしますが、冬菜(ふゆな)
の美味しい時季で、鍋物に漬物に野菜を摂るのに適しています。
 冬場に見られる白菜、小松菜、芥子菜、水菜、ホウレンソウや杓
子菜(しゃくしな)、体菜(たいさい)などをいうそうです。冬菜
をざっくり切って鍋物に入れて煮詰まらないうちに頂く、皆さまも
たくさん召し上がって滋味を楽しんで下さい。
 用事を済ませて、暖かくして机に向かい、一時ほど文を書いたり
読書するのも落ち着きますね。

寒空に咲く花がいとおしい
 花屋さんには室咲(むろざき)の美麗な花々が匂っていますが、
日当たりの良い所では、冬菫や名も知らぬ小さな雑草の花が可憐に
咲いていることがあります。
 枇杷(ビワ)は小さな白い五弁の花が、密生した茶色の毛に守ら
れるかのように咲いていて、寒い時季らしくお似合いですね。
 冬桜〔寒桜〕は花も疎(まば)らに、寒空に薄桜色の梅に似たか
の端麗な花を咲かせます。
 早春の梅は香り高く春の訪れを感じさせますが、冬の梅は冬至梅、
寒梅〔カンバイ〕などといわれています。蝋梅〔ロウバイ〕は唐梅
〔カラウメ〕ともいわれますが、葉の無い枝に、繊細な蝋細工のよ
うな黄色の花をつけ、二重の花びらは可愛く良い香りがします。
 冬でも比較的に暖かい海に近い地方では菊科の石蕗(ツワブキ)
の黄色の小花を見ることがあります。十二月の暦花で、葉の形がフ
キに似ており、艶(つや)やかに光っていることから艶蕗と言われ
るようになったそうです。
 野山は冬枯れですが、松や柏、杉など常緑樹は凛(りん)として
美しい緑を誇り、寒さにも相応しい風情ですね。古来常磐木(とき
わぎ)といわれ、一年中、緑の葉を保つ木は好まれて来ました。
 厳しい寒さをしのいでいる樹木を冬木(ふゆき)、冬木立という
そうです。寒風に揺れる枝々にはよく見ると、もうすでに冬芽もあ
り、春待ちの息吹があります。
『庭の薮柑子(ヤブコウジ)は植木好きな母が山より持ち帰った植
物で、一年中、凛として何とも言えない風涼な庭木になりつつあり
ます。広島市西区 M・Mさん』

野山の草木も冬に耐える
 花の少ない季節、寒風の吹く野外で、木の緑の葉に隠れた赤い実
などを発見すると、なにか嬉しくなるものですね。
 藪柑子の赤い実が愛らしく、常緑の小さな木で、高さ約一尺くら
い、夏に花を咲かせ小さな珠のような実を結んで、冬になると、こ
の実が紅く熟します。そこからでしょうか、アカダマノキとも、深
見草などともいわれます。漢名は何故か紫金牛というそうです。
 冬の緑には千両や万両、万年青、南天の緑の葉と赤い実の対比、
白い実も可愛いものですね。
 南天〔ナンテン〕は「難転」という字音と同じで縁起の良い木と
して、生け花に用いられ、庭木にもよく植えられています。漢名は
「南天竹」というそうです。

皆さまからのご投稿の紹介

吉岡正毅さん〔北九州市〕
「…大自然の大いなる愛にふれて心の傷を癒され、なぐさめられる
人々も多いことでしょう。家々の窓にともる やわらなか光に、凍
る心に、ふと温度を感じる人々もいるかもしれませんね。」

白川美昌さん〔広島県安芸郡〕
   年かさね装いばかり若返り
   降り積もる雪ふみわけて犬の供

すみれさん〔安佐南区沼田〕
   豆絞ワッショワッショで秋終る
   三世代肩揉みあひて冬支度

高橋昭三さん〔安佐北区可部〕
   誰彼のどんぐり見れば拾ひけり
   たらちねの母ゆずりなる柚釜かな
   草の花許多摘みてはみしものを

鶴岡九晃さん〔中区南千田〕
   大晦日今年の芥を掃き清め
   年越しのそばで長寿を祝はれる
   吉祥と言われる雪が降り始め

 心暖かい気持ちで末年始を過ごされますように御佛様の
ご加護をお祈りいたします。         純照 記


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