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◆秋の爽やかさ 美しさ◆ 遙かな山々の紅葉は、都会の街路 樹にまで移り来て、秋の風情は最も 美しいころとなります。 山野は秋色に染まり、人々の秋の 装いもお洒落な感じですね。 お大師さまは、性霊集の巻二で 「秋錦(しゅうきん)林に開けて」 とつづられています。 空は青く高く晴れ、風は涼しく爽やかに、秋の深まりを運びます。 風に舞う落ち葉は、赤に黄に茶色に色づき、秋の別れを告げます。 秋の紅葉には、目に見えぬ葉の微細な細胞のなかでで起こっている 不思議な世界があります。アントシアンという色素は植物の花や葉、 果実などの赤・青・紫色などの彩りを出すそうです。 紅葉という自然に表れた美しい変化の微妙さ、それらを見る人々は 心晴れるような思いです。 秋は葉や実が豊かに色付き、緑は落ち着いた色合いとなり、草木そ れぞれに秋の装いです。あるものは結実し、よく熟して美味しそうな 実をつけて、小鳥たちも嬉しそうについばんでいます。 草の錦、草紅葉という言葉がありますが、落ち葉は大地に舞い落ち てもしばらくはその葉の赤や黄の色をとどめ、人の足元を飾ります。 紅葉敷く、落ち葉敷く、大地を彩る美しい表現があります。 紅葉した木の葉を拾って持ち帰り、本の栞(しおり)にしてみるの も、ちょっと素敵ですね。綺麗な和紙や色紙に木の葉を貼り、飾り紐 などつければ、さらに秋を創り楽しむことができます。 ◆豊かに柿の実の熟する風景◆ 秋の味覚の柿は、熟れた実で枝が撓(しな)っているようすは秋の 風景そのもの、柿紅葉も美しく、柿落ち葉も風情があります。 秋は実りの季節、きのこ狩り、果実狩り、紅葉狩りなど、「狩り」 という言葉は日本では採集にも用いられる言葉で、自然散策し採集し、 鑑賞し文学に表現することも含まれています。 春の若菜や梅・桜花、薬草や松茸、蛍、紅葉などを尋ねて山野に 入り、採集し観賞することは古来より行われていますが、自然の清ら かな空気と風の中にわが身をおき、目と心を楽しませ歩くことが何よ りの健康法となります。 ◆月はまどかに、光はさやかに◆ 「月宮」という言葉は古代、須弥山(しゅみせん)をめぐる月の中 にあり、銀や宝石から成る月天子の宮殿とされ、月光殿ともいわれま した。月華(げっか)は月光、月光のことをいいます。 中国の伝説には金烏玉兎といわれ、太陽には三本足の烏が、月には 兎が住むという伝説があります。 ギリシャ神話の月の女神アルテミスは、西洋では家畜の保護神とさ れ、さらに誕生や多産・子供の守護神とされています。 海月(かいげつ)は海上の空に澄んでいる月ですが、海面に浮んだ 微小な波に揺れる美しい月影をいいます。海中を漂う「クラゲ」の別 称しても使われます。 十六夜(いざよい)の月は満月よりも少し遅く、ひかえめにためら うようにして出てきます。 秋の月の明るさは、心を晴れやかにしてくれます。一日のしごとを 終えられたら、背筋を伸ばして、月や星を見上げてみられてください。 み佛さまのお優しい慈しみの光が心にとどくようです。 ※皆さまからのご投稿より※ ◆白川美昌さん〔広島県安芸郡〕 輝けりイモ掘り当てし孫の顔 晩酌や浮世の彼方の月の夜 かたりあう老いの旅路や秋の夜 ◆すみれさん〔広島市安佐南区沼田〕 背丈ほど育つ蓮の実新学期 田舎道今を盛りと葉鶏頭 新涼に持ち帰りたき山野草 ◆廣砂ナツ子さん〔広島県三次市〕 歌づくり初心なれども心ひかれ友の手ほどき七十路をゆく 客あらぬ一人ですごす盆の灯に祖先偲びて今の幸せ ねじれ花命あるまで咲きつぎて明日をも知れぬ吾いとおしむ 過し日を想いめぐりて夜半に起き心なごめる鈴虫の声 孫台風障子に穴の置土産 (俳句) ◆田中智華さん〔広島市佐伯区〕 我が務め激務にあれど かぎりなく青きみ空よ心癒さぬ コスモスの思い出悲し秋の風 吾娘の忌やコスモスの花咲きにけり ◆鶴岡九晃さん〔広島市中区南千田〕 秋の夜は俄に歌人の顔になり 人生も斯くやと夕焼け見て思う 後の月知って居る人なつかしい 皆さまには体調を整え、秋の日々をお楽しみ下さい。純照 記