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月刊「観自在」十月の歳時記 神無月(かんなづき)

秋の爽やかさ 美しさ

 遙かな山々の紅葉は、都会の街路
樹にまで移り来て、秋の風情は最も
美しいころとなります。
 山野は秋色に染まり、人々の秋の
装いもお洒落な感じですね。
 お大師さまは、性霊集の巻二で
「秋錦(しゅうきん)林に開けて」
とつづられています。
 空は青く高く晴れ、風は涼しく爽やかに、秋の深まりを運びます。
 風に舞う落ち葉は、赤に黄に茶色に色づき、秋の別れを告げます。

 秋の紅葉には、目に見えぬ葉の微細な細胞のなかでで起こっている
不思議な世界があります。アントシアンという色素は植物の花や葉、
果実などの赤・青・紫色などの彩りを出すそうです。
 紅葉という自然に表れた美しい変化の微妙さ、それらを見る人々は
心晴れるような思いです。
 秋は葉や実が豊かに色付き、緑は落ち着いた色合いとなり、草木そ
れぞれに秋の装いです。あるものは結実し、よく熟して美味しそうな
実をつけて、小鳥たちも嬉しそうについばんでいます。

 草の錦、草紅葉という言葉がありますが、落ち葉は大地に舞い落ち
てもしばらくはその葉の赤や黄の色をとどめ、人の足元を飾ります。
紅葉敷く、落ち葉敷く、大地を彩る美しい表現があります。
 紅葉した木の葉を拾って持ち帰り、本の栞(しおり)にしてみるの
も、ちょっと素敵ですね。綺麗な和紙や色紙に木の葉を貼り、飾り紐
などつければ、さらに秋を創り楽しむことができます。

豊かに柿の実の熟する風景
 秋の味覚の柿は、熟れた実で枝が撓(しな)っているようすは秋の
風景そのもの、柿紅葉も美しく、柿落ち葉も風情があります。
 秋は実りの季節、きのこ狩り、果実狩り、紅葉狩りなど、「狩り」
という言葉は日本では採集にも用いられる言葉で、自然散策し採集し、
鑑賞し文学に表現することも含まれています。

 春の若菜や梅・桜花、薬草や松茸、蛍、紅葉などを尋ねて山野に
入り、採集し観賞することは古来より行われていますが、自然の清ら
かな空気と風の中にわが身をおき、目と心を楽しませ歩くことが何よ
りの健康法となります。

月はまどかに、光はさやかに
 「月宮」という言葉は古代、須弥山(しゅみせん)をめぐる月の中
にあり、銀や宝石から成る月天子の宮殿とされ、月光殿ともいわれま
した。月華(げっか)は月光、月光のことをいいます。
 中国の伝説には金烏玉兎といわれ、太陽には三本足の烏が、月には
兎が住むという伝説があります。
 ギリシャ神話の月の女神アルテミスは、西洋では家畜の保護神とさ
れ、さらに誕生や多産・子供の守護神とされています。
 海月(かいげつ)は海上の空に澄んでいる月ですが、海面に浮んだ
微小な波に揺れる美しい月影をいいます。海中を漂う「クラゲ」の別
称しても使われます。
 十六夜(いざよい)の月は満月よりも少し遅く、ひかえめにためら
うようにして出てきます。
 秋の月の明るさは、心を晴れやかにしてくれます。一日のしごとを
終えられたら、背筋を伸ばして、月や星を見上げてみられてください。
み佛さまのお優しい慈しみの光が心にとどくようです。

皆さまからのご投稿より

白川美昌さん〔広島県安芸郡〕
     輝けりイモ掘り当てし孫の顔
     晩酌や浮世の彼方の月の夜
     かたりあう老いの旅路や秋の夜

すみれさん〔広島市安佐南区沼田〕
     背丈ほど育つ蓮の実新学期
     田舎道今を盛りと葉鶏頭
     新涼に持ち帰りたき山野草

廣砂ナツ子さん〔広島県三次市〕
   歌づくり初心なれども心ひかれ友の手ほどき七十路をゆく
   客あらぬ一人ですごす盆の灯に祖先偲びて今の幸せ
   ねじれ花命あるまで咲きつぎて明日をも知れぬ吾いとおしむ
   過し日を想いめぐりて夜半に起き心なごめる鈴虫の声
     孫台風障子に穴の置土産 (俳句)

田中智華さん〔広島市佐伯区〕
   我が務め激務にあれど かぎりなく青きみ空よ心癒さぬ
     コスモスの思い出悲し秋の風
     吾娘の忌やコスモスの花咲きにけり

鶴岡九晃さん〔広島市中区南千田〕
     秋の夜は俄に歌人の顔になり
     人生も斯くやと夕焼け見て思う
     後の月知って居る人なつかしい

 皆さまには体調を整え、秋の日々をお楽しみ下さい。純照 記


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