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月刊「観自在」九月の歳時記 (長月ながつき)

秋風に秋の色合い表れて

 季節は移り変わり、空の深さ、雲のようす、
風の流れにも秋らしい風情が感じられます。
 秋高し、秋の空の雲もなく 澄みきって、
清々しいさまをいいますが、秋彼岸の頃から
は更に涼しく「秋づく」良い季節になります。
涼風静かに、夕暮れて虫の声も増えて楽しく
なって行きます。

 西の山が茜色に染まる、静かで美しい秋の
夕暮れですが、茜色は暖かく懐かしい色合い
ですね。
 茜はアカネ科の蔓性多年草で、山野に自生し、根は橙色をしています。
茎は四角くて中が空で、秋になると白色の小さな花を咲かせます。この根
から染料を採ったり、茜根といって生薬として用いられました。
赤い染料のアリザリンを含み、微妙なあの懐かしい夕焼け色の赤橙を茜色
といいます。

 一方、清青色の藍〔アイ〕は野山でよく見られるイヌタデによく似た草
花、秋に花柄を出し、紅色の可愛い小花を穂のようにつけます。藍はタデ
科の一年草で、日本の古風な奥ゆかしい「藍色」はこの葉や茎からの染料
をとります。質素で素朴で深みのある藍染めは江戸時代には各地に広まり
ました。青より濃く、紺より淡い微妙な色合いには魅せられますね。

野草に愛らしい花の咲く秋
 花野という言葉、秋草の花…、秋咲く奥ゆかしく素朴な花々の総称で、
優しい感じがあります。
「秋の七草」は秋に咲く古来好まれた七種の草花で、萩・薄(尾花)・葛
・撫子・女郎花・藤袴・桔梗…、思い出にある花々、華美ではなく雅びで
優しい感じがありますね。

「秋穂」に豊かに秋の実った稲穂のことをいいます。草葉にも夏の勢いが
しだいに衰えますが、結実の時を迎えつつあります。
 大気がしだいに冷めて、大地は落ちつき、秋草の花は奥ゆかしく、心を
優しくしてくれます。

季節のうつろい、静まる秋
 「秋の心」という言葉がありますが、夏から秋へと静まり、うつろいゆ
く自然から、落ち着きや静けさを知り、もののあわれを感じとり、創造性
も伸びます。
 気候の落ち着きとともに人の心も静かに、落ち着き、離れた人を想い、
読書も進み、秋は思索が深まる時季ともされています。
「秋の灯」は秋の夜の机のともしび、涼しくなり気候が良くなりますと、
読書三昧も良し、俳句や川柳、短歌、絵画、書道、音楽など皆さまも趣味
の時間をもたれ、ゆったりとお過ごしください。
 朝や昼間は、秋日和にはゆったりと散歩なども良いものです。

 秋桜〔コスモス〕はたおやかな花ですが、秋桜畑となりますと壮観なも
ので微かな秋風に揺れる花々は天上界の花畑のようです。
 鶏頭〔ケイトウ〕は鶏冠状や丸・羽状の花序があるそうです。
 秋海棠はベゴニアともいわれ、ふつうは九月頃、長い柄の先に淡紅色の
花を開きます。種類が多く、優美な花が垂れ下がります。

鶴岡九晃さん〔中区南千田〕 川柳投稿
    青く澄む秋の心を身に受けて
    名月を見上げて秋を楽しみぬ
    老人は昔の本で夜を更かす

田中智華さん〔佐伯区〕 短歌と俳句
   紫の濃きとうすきに色わけて 我が庭隅に朝顔咲きぬ
   青空を勇々と舞う鳶一羽

白川美昌さん〔広島県安芸郡〕 俳句
   初秋やバッタ飛びこむ昼さがり
   白髪染むトンボ来たりて日短し
   旅に出し夫恋しきと秋の虫

すみれさん〔安佐南区沼田〕 俳句
    片蔭にサンダル鳴りし隠れん坊
    音もなく上る花火や窓の景

季節の変り目、お大事にお過ごし下さいませ。純照 記


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