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月刊「観自在」十一月の歳時記 霜月(しもつき)

菊の香高き晩秋の候

 草の枯れて、落ち葉敷く、もうすっかり晩秋の風情の中------、
十一月七日は暦では早くも立冬、二十二日は小雪となります。
 此の頃になりますと、草葉が枯れゆきて、自然に緑と花が少なく
なっていく中で、ひときわ菊の花の美しい頃となります。

 この菊を丹精される方は多く、花の姿と香り共に清楚(せいそ)で
凛(りん)とした日本的な花のひとつです。
「霜見草」「霜下の傑(けつ)」などは冬近くに咲き誇る菊の別名
とされ、古くから好まれる花です。
 優雅で艶やかな大輪の菊、優美に菊花の枝を伸ばす懸崖(けんが
い)づくり、嵯峨菊の素朴で高貴な姿、慎ましく可憐な野菊の花と
種々の姿があります。

 菊は花の色や形の美しいものが多く、端正な姿と香のためでしょ
う、古風な花瓶に活けられると輝くような美しさがあふれます。


 現在では一年中、菊を見ること
ができますが、秋の菊はやはり香
が高く、秋の清澄な空気のもと、
漂い来る端正な匂いは、気持ちが
引き締まるような感じです。

 世の中の煩わしさを、佛教では
世塵といいますが、秋の日の街角
の一枝の菊には、我が心の惑いが
洗われるような、はっとするよう
な清らかさがありますね。

大自然と浄い心への共感は

 自然の移り変わりに目を向けてみると、晩秋は物悲しく感じられ
ます。人の感傷は、自然に畏敬(いけい)の念を感じて、命の尊さを
知りつつ暮らすことからでしょうか。
 冬近くの寂しさは自然は春を待ちつつ静かに耐え、大地の暖かさ
を知る休息の時にも思えます。

 生活が便利になり、一見快適そうですが、自然は確実に少なくな
り、自然にふれて溶け込む時間も少なくなりつつあります。
 現代は一応に豊かになりましたが、能率よく進行する社会と日常
生活には、人工的な情報があふれかえり、自然の波長を失くし、だ
れもがストレスをかかえています。

 大らかなものや、あたたかいもの、ゆったりとしたもの、そして
自然なもの、浄らかな心が求められています。
 お寺には、学生さんから若いご夫婦、小さなお子様から年配の方
までお参りが多くなっています。
 み佛(ほとけ)さまにお会いされて、お参りのひと時を安らかに、
くつろぎ、楽しんでおられます。

陽射しのあたたかさを知る

 晩秋の十一月の陽射しは、だいぶ弱くなり、日陰はすでに肌寒く
なり、冬を待つ季節感が感じられるものとなっていますね。

 秋から冬にかけて降る雨を時雨(しぐれ)といいます。晩秋の日、
空が曇ったかと思う間もなく、暗い冷たい雨が降る…、また知ら
ぬ間に晴れていたり、月の光も澄みきって肌寒い感じですね。

 晩秋に降る雨に、草葉は枯れて、生きものによっては、少し先に
生命を終え、大地の元素に還(かえ)るものもあります。自然として
は淡々とした移り変わりですが、人には寂しく感じられる風景です
ね。
 古(いにしえ)は情が起こり、心が動かされるさまを「あはれ」と
いったようです。人々を含めた自然の微妙な変化に、心おどろかす
楽しさがあります。

 現代は人工の情報過多で騒がしいのかも知れません。時代の移り
変わりは、人の心を鈍くしてゆくかのようで、人々の思いや表現が
少なくなりつつあります。

 自然の風にふれて散策したり、身近なことから気分転換を工夫し、
自由な、ゆとりの時間を持とうとする意欲が大切です。音楽教室や
ケーキ教室、俳句教室など気楽に楽しみにお越し下さい。


皆さまからのご投稿より


田中智華さん〔広島市佐伯区〕 

    孫が来て生けてくれたよ
         患者(クランケ)の顔輝きて一輪の花

    古里は柿たわわなり恙がなし


白川美昌さん〔広島県安芸郡〕

    唐衣山も祭りや木の葉映え

    芽吹く春知るや知らずや落ち葉散る

    帰る家あれば旅路もたのしかり


すみれさん〔広島市安佐南区沼田〕

    釣人の腰水寒し葛の花

    ばった取り子等も跳ねてるすすき径

    幼稚園泣く子の居たり運動会


鶴岡九晃さん〔広島市中区南千田〕

    働けること楽しみに今日もすみ

    落葉掃く楽しみ二人年を取り

    あれこれと見に行く丈の文化の日

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