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◆菊の香高き晩秋の候◆ 草の枯れて、落ち葉敷く、もうすっかり晩秋の風情の中------、 十一月七日は暦では早くも立冬、二十二日は小雪となります。 此の頃になりますと、草葉が枯れゆきて、自然に緑と花が少なく なっていく中で、ひときわ菊の花の美しい頃となります。 この菊を丹精される方は多く、花の姿と香り共に清楚(せいそ)で 凛(りん)とした日本的な花のひとつです。 「霜見草」「霜下の傑(けつ)」などは冬近くに咲き誇る菊の別名 とされ、古くから好まれる花です。 優雅で艶やかな大輪の菊、優美に菊花の枝を伸ばす懸崖(けんが い)づくり、嵯峨菊の素朴で高貴な姿、慎ましく可憐な野菊の花と 種々の姿があります。 菊は花の色や形の美しいものが多く、端正な姿と香のためでしょ う、古風な花瓶に活けられると輝くような美しさがあふれます。 現在では一年中、菊を見ること ができますが、秋の菊はやはり香 が高く、秋の清澄な空気のもと、 漂い来る端正な匂いは、気持ちが 引き締まるような感じです。 世の中の煩わしさを、佛教では 世塵といいますが、秋の日の街角 の一枝の菊には、我が心の惑いが 洗われるような、はっとするよう な清らかさがありますね。 ◆大自然と浄い心への共感は◆ 自然の移り変わりに目を向けてみると、晩秋は物悲しく感じられ ます。人の感傷は、自然に畏敬(いけい)の念を感じて、命の尊さを 知りつつ暮らすことからでしょうか。 冬近くの寂しさは自然は春を待ちつつ静かに耐え、大地の暖かさ を知る休息の時にも思えます。 生活が便利になり、一見快適そうですが、自然は確実に少なくな り、自然にふれて溶け込む時間も少なくなりつつあります。 現代は一応に豊かになりましたが、能率よく進行する社会と日常 生活には、人工的な情報があふれかえり、自然の波長を失くし、だ れもがストレスをかかえています。 大らかなものや、あたたかいもの、ゆったりとしたもの、そして 自然なもの、浄らかな心が求められています。 お寺には、学生さんから若いご夫婦、小さなお子様から年配の方 までお参りが多くなっています。 み佛(ほとけ)さまにお会いされて、お参りのひと時を安らかに、 くつろぎ、楽しんでおられます。 ◆陽射しのあたたかさを知る◆ 晩秋の十一月の陽射しは、だいぶ弱くなり、日陰はすでに肌寒く なり、冬を待つ季節感が感じられるものとなっていますね。 秋から冬にかけて降る雨を時雨(しぐれ)といいます。晩秋の日、 空が曇ったかと思う間もなく、暗い冷たい雨が降る…、また知ら ぬ間に晴れていたり、月の光も澄みきって肌寒い感じですね。 晩秋に降る雨に、草葉は枯れて、生きものによっては、少し先に 生命を終え、大地の元素に還(かえ)るものもあります。自然として は淡々とした移り変わりですが、人には寂しく感じられる風景です ね。 古(いにしえ)は情が起こり、心が動かされるさまを「あはれ」と いったようです。人々を含めた自然の微妙な変化に、心おどろかす 楽しさがあります。 現代は人工の情報過多で騒がしいのかも知れません。時代の移り 変わりは、人の心を鈍くしてゆくかのようで、人々の思いや表現が 少なくなりつつあります。 自然の風にふれて散策したり、身近なことから気分転換を工夫し、 自由な、ゆとりの時間を持とうとする意欲が大切です。音楽教室や ケーキ教室、俳句教室など気楽に楽しみにお越し下さい。 *皆さまからのご投稿より* *田中智華さん〔広島市佐伯区〕 孫が来て生けてくれたよ 患者(クランケ)の顔輝きて一輪の花 古里は柿たわわなり恙がなし *白川美昌さん〔広島県安芸郡〕 唐衣山も祭りや木の葉映え 芽吹く春知るや知らずや落ち葉散る 帰る家あれば旅路もたのしかり *すみれさん〔広島市安佐南区沼田〕 釣人の腰水寒し葛の花 ばった取り子等も跳ねてるすすき径 幼稚園泣く子の居たり運動会 *鶴岡九晃さん〔広島市中区南千田〕 働けること楽しみに今日もすみ 落葉掃く楽しみ二人年を取り あれこれと見に行く丈の文化の日