風薫る五月、さわやかな季節の訪れです


五月の歳時記 皐月(うづき) 田川純照


五月晴れ 薫風さわやかに
 五月は初夏の兆し、陽光が眩(まぶ)
しく緑を輝かせ、花を咲かせます。
野の草は、密(ひそ)やかに可憐な花を
つけ、草の背丈も急に高くなります。
 心地好い風を受けて、五月晴れの
風景を眺めながら、ゆったりと自然
の精気に溶け込むように時を過ごす…、
良い気候となりました。紫外線も強い
ということですので、お出掛けの時に
は、なるべく帽子や日傘をおもちくださいね。

 さわやかな五月、こどもの日がありますね。子供たち、特に男の
子たちが、のびのびと自然に親しみ、野原で駆け遊ぶ、というわけ
にもいかなくて、難しい世の中になりました。
 少子化のうえに、年齢を超えて子供たち同士で遊んだり、動物や
草木とふれあうことが少なくなりました。人や動物など生きている
ものに対することは、パソコンゲームなどと異なり、顔色を見たり、
気兼ねや、気配りしたり、相手の立場で考えることで、始めて良い
関係が熟成されていきます。幸福の基本にあることがらですね。

藤の花房が垂れて揺れて
 藤色は日本的な美しい色のひとつです。藤〔フジ〕が五月の青空
から房花を垂れるのは、優美な感じで藤棚も花の道のようになると
初夏の花見ができます。
 藤色、淡紫色や白色、黄色の小さな「蝶の羽の形」の花は豆科の
植物で愛らしいものです。
 長い藤色の花穂を、見上げると輝く緑の葉の中から垂れる、そし
て風に揺れ、藤波の間を蝶や蜂が飛び舞うようすは爽やかです。
 ポピーはヒナゲシ〔雛罌粟〕ともいわれますが、花壇で風に揺れ
るさまに心も軽やかになります。虞美人草〔グビジンソウ〕、美人
草、麗春花ともいわれます。まるで薄紙のような四枚の花びらで、
皺(しぼ)のある薄い四弁花を開き、赤、橙、黄、白ともに花壇の
中でも鮮やかで、くっきりとした存在感のある花です。
 マーガレットは五月の風にそよぐに相応しい花です。近年は品種
も増えたそうで、桃色、黄色、赤色の花びらがありますし、八重や
丁字咲きの花もあります。菊科の花で可憐な春菊のよう、白い花弁
と細かな緑の葉は、花束にすると優美な感じがあります。
 初夏は牡丹や芍薬などの供花も増えて、本堂に生けられた初夏の
花々は行道の僧侶の法衣の風に揺れていっそう清楚な感じです。

風に吹かれて、ほっと深呼吸
 風薫る五月、薫風(くんぷう)という言葉がありますが、初夏の
風情のなかで、涼やかな風がゆるやかに吹くことをいいます。
 青葉の香り、初夏の精気----、花々の香り、大地の匂い、海の風、
オゾン、生命に満ちあふれた初夏の到来です。青葉が繁り、真緑が
目にしみる季節、良い季節です。

 五月は八十八夜を越して、朝顔の種まき----、小さな植木鉢で花
を咲かせる品種も多くありますので、丹精されると楽しいでしょう。
 朝顔はもとは南方の植物といわれ、種の芽が出にくいので、種の
目の反対側を削って水につけるとよく発芽するそうです。大輪で、
背の低い品種の朝顔も、花の色がたくさんありますので、皆さまも
楽しまれたら如何でしょうか。奮って花の写真をお寄せください。

 庭が無くても窓辺の鉢植えでも出来る、手間の掛からない小さな
家庭菜園も楽しいです。小鉢にパセリやネギの根を植えても意外に
根付くもので、新しく葉が出たらちょっと摘んで洗って食卓へ、と
いうのも楽しいものです。
 ミニトマトや香味野菜など鉢植えで丈夫で手の掛からないものが
気も楽で、お勧めです。

皆さまからのお便りとご投稿

奈津子さん(俳句三首)
   み佛のおかげで生かされ今日も暮れ
   前向きに生きよと我に言い聞かせ
   立雛に白酒添えて頬を染め

田中智華さん〔広島市佐伯区〕
  骨折の痛みにたえて我れ思う 我が身をつねり人の痛さを
  パンジーの風になびいて笑いけり

白川美昌さん〔広島県安芸郡〕
    岩山に彩りそえるヤマツツジ
    木の葉ぬう水の流れや花しょうぶ
    目に沁みる若葉写せるものは無し

つばきさん〔京都市左京区〕
    休日はテレビチャンネル争奪戦
    7桁にポストも増えてアアややこし
    恩忘れ思い上がりに「ハッ」とする

鶴岡九晃さん〔広島市南区千田〕
    五月晴見上げる空が広くなり
    ビルの街昔田植えをした所
    庭に出て花を咲かせる趣味が出来

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