如 是 我 聞 (にょぜがもん=是の如く我聞けり)

              文責 能島慶華 −観自在97.10月号(1)

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    世の中が随分と便利になったが
          精神的には貧困になったのでは
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 人間が自然に手を加えて、随分と便利になった。衣食住をはじめ
技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治・経済など生活は高度に発達
したように感じられるが、反面、人の手で作られたもの、人によっ
てなされた行為に対して、人によって変更・形成・規整されること
なく、おのずからなる生成・展開によって成立した状態が不安定に
なった。
超自然や恩寵に対して私たちは多くの物を失っているように思える。
傲慢(ごうまん)な人間は文化に溺れて自然を破壊して省(かえり)
みない結果が昨今の世相ではなかろうか。


   異常気象も気になるけれど
          人間のすることがとても心配

■人間が最初に口にした言葉は多分「あ」か「うん」ではないかと
思います。それが、いろいろと分化して英語や中国語になったり、
日本語になったのでしょう。
 絵を描いたり、文字を作ったりして、伝承が記録に残されるよう
になった。石ころで木の実や貝などを割っていたのが、とどのつま
りは核爆弾を作る能力まで身に付けてしまった。
 人間って本当に凄いスピードで発展して来たようです。
 地球と言う歴史からすれば瞬きするような短い時間、僅か五千年
か六千年の時間で、このように過激に変化した動物は他に例が無い
ように思います。

 分けても、この百年の変貌(へんぼう)は、人間の想像の全てを
飛び越えてしまうものでした。
 核の平和利用、胡散(うさん)臭いことです。核廃棄物の処理の
具体的な方法が見えて来ません。原子力発電所も稼働しているけど、
あれも老朽化しますが、その後が厄介、原子力潜水艦の古いものが
処置無しで、ウラジオストックに日本の援助で造られた廃棄用ドッ
クがこの地方に係留場所が無くて云十億円が無駄遣いになっている
とか。
 石炭で動く蒸気機関が人間を相当駄目にして、石油で動くエンジ
ンが曲者(くせもの)、電気で動くモーターは決定的に駄目人間を
量産しているように思います。

▼法主(ほっす)さんは、時計があまり好きではありません。パソ
コンの処理速度を表すという「ヘルツ」と言う単位が理解出来ない、
ペンティアムプロ200メガヘルツなんて想像外の代物と言われる
のが私にも何だか同感出来るような気持ちがします。

 私の使っているパソコンは、林檎マークの付いたパワーマックで
メモリーを266メガ積んでいますが、私は気に入っていますが、
法主さんはお好みではありません。
 法主さんのウィンドウズは166メガヘルツでメモリーは114、
固定ディスクは4四ギガあります。
 殆ど気が妖(あや)しくなりそうな化け物と毎日付き合っていて、
承知出来ない環境だと言われます。
 で、日常的に海外の人ともメールの遣り取りをしておられますが、
多い日は内外合わせて500通は処理しなくてはなりません。

 観音院のインターネットはNTTのOCNに繋いであって固定料金
で1ヵ月十数台で4万円弱、皆さまが気兼ねなく使用出来るように設
備してありますが、これは資源の無駄遣いのような気がすると言われ
ます。回線を繋いだままであるのは節約の概念に馴染まないのが気に
入らない理由だと言われます。
 ディジタルなものに多少はアレルギーを持っておられます。
 数えることや、体感出来ないものや、想像を超える正確さに、アレ
ルギーを持っておられます。

 昔は、飛行機に搭乗して喜ばれた時もあったのだそうですから、
大変な心境の変化と言えます。
 この機材や乗物の進歩と言うか、発達と言いましょうか、これに
疑問を持たれるようになったのは、新幹線が時速300キロで走る
ことを目指していると知られた時からです。もう一つは目まぐるし
いパソコンの新機種の発売で相当に気を悪くされました。
 もう一つは電卓式の計算機能が気に入らないようです。法主さんは
積木を積むような煉瓦造りの計算がお好みのようです。パソコンも
所詮は同じことだが、昔にあった手回し式のタイガー計算機までが
お気に入りらしいふうです。

 集積回路というのが「お気に召さない」。顕微鏡で見ると曼荼羅
(まんだら)のように見えるCPUが、このような石を造った人間
は、これから一体、何をするのだろうかと疑問を感じておられます。
 そして、そのような環境に居るご自分を法外なことだ、と感じて
おられる様子が感じられます。

 秦の始皇帝の兵馬俑坑(へいばようこう)を見た時と同じような
怖さを感じられているそうです。
 宗教は著しく力を失い、政治は混乱し、経済は破綻の様相を示し
ているようにも思えます。
 学問は生きることから離れて偏差値に牛耳られ、興味を持つこと
が難しくなっています。
 芸術は何かの壁にぶっつかって苦しみのたうっている。
 技術は自然を破壊し、人間の尊厳をおかしつつある。遺伝子の組
み替えとか、臓器移植とか、脳死の定義とか、必要とするものは、
まるで武装するように重装備になりつつあります。

 法主さんは「今に耳掻きの先に目が付いて、ディスプレイを見な
がら、耳垢を取るようになるかも知れない」と例を挙げて、技術の
発展と商品化に疑念を持たれているようです。

 エチオビアは「緑滴る国」と言う意味だったそうですが、大地は
砂漠化しつつあります。アメリカや中国の空を飛ぶと、眼下に延々
と広がる砂漠化した大地を見ることが出来ます。
 山の木を切って、焼き払い、それを開拓して農業をする、所謂、
焼き畑農業はブラジルの緑を確実に削減しています。
 太陽の光は私どもに多くの恵みを与えて地球の歴史がありました。
 今、二酸化炭素のマントが地球をすっぽりと包んでいて、温暖化
が進んでいます。
 フロンガスがオゾン層を破壊して、南極や北極に大きな穴が空い
てしまい、このオゾンホールは日本では北海道でも観察されるよう
になってしまいました。

 阪神大震災は大きな教訓を残しました。あの時に役にたった乗物
は自転車やバイク、中々復旧しなかったのは水、必要な物は軍手と
懐中電灯、丈夫なズックなどなど。
 通信手段としては携帯電話が有効でした。
 震災は人災では無く天災ですが人災と言える部分も沢山にありま
した。老朽化した高速道路の崩壊や手抜き工事の発覚。幸いに新幹
線は運転されていなかったものの、復旧に時間が掛かりました。
 言い換えれば、もし走行中の列車があれば、どのような惨事が起
きたか想像もできません。
 新幹線も電車も復旧し、道路も通れるようになりました。今、皆
さんは何の恐怖も感じることなく交通機関を利用しておられます。
 大丈夫なのでしょうか、地震は何時、何処で起きるか予測できま
せん。交通路線の下に幾らでも活断層は走っています。

 災難は善人であろうと悪人であろうと、信心が深かろうと浅かろ
うと、平等に振りかかつて来るもので、御佛様を信じていて御守護
頂いておれば避けられるとは申し上げられません。


 自然はどのように変化し
     恩寵(おんちょう)は頂くことができるか

 法主さんは、昨今の思想・文化・風俗・社会・政治・学術・経済
などの現象などについて、その人生的価値や社会的価値を批判し、
評価する意図は無いそうです。
 道徳がすたれて人情の薄くなった現在を、末法の世と捉えておら
れるのでも無いそうです。確かに佛法が衰えているのは確かですが、
もっと違う次元なのです。
 人間がすることに、歯止めが掛からない、貪欲な人間が、これか
ら何をするのだろうかと不安を感じておられるのです。

 どこかに、畑を耕して、種を蒔いて、育てて、収穫して、テレビ
や電話が無くても良いから、自然の中に生きて、無理なく生きて行
こうと言われているのでもありません。
 瀬戸大橋が完成して、それを渡られて「何とも便利になったもの
だが、架け替えはどうするのか」と心配しておられました。

 過ぎたるは及ばざるが如しと受け止められたのでしようか。金融
公庫の金利が3パーセントになって、史上最低となり、冷えた需要
を喚起するためだと聞かれて、売れ残った公庫の住宅があるのに、
誰のための需要喚起かと、心配しておられるのです。

 たしかに、新しい家を建てることによって、沢山の雇用が産まれ
ることも、関連して様々な物が売れることも理解されていますが、
借金を払うために人が働かなければならないことに疑問を感じてお
られるのです。
 何だか、世間の皆さんが大変な贅沢、浪費をしておられるような
気がしてならない。これは私(法主)を含めての話です。
 ですから、他人事として眺めて言っておられるのではありません。
ご自分の事として、電気を豊富に使用し、高機能で便利なパソコン
を使用し、冷暖房を享受(きょうじゅ)され、新幹線や飛行機を利
用され、僧侶である前に一市民として、これで良いかと自問自答に
困惑されて、葛藤を話しておられるのでしょう。

 山間地や島嶼部(とうしょぶ)にも良く出掛けられます。そして、
海も山も痩せて、荒れているように感じられると言われます。
 外国にも行かれますので、環境の変化には敏感な方です。タイの
通貨が変動性に移行したことによる東南アジアの経済危機について
も、日本から三千社から四千社が進出していて、観音院に参詣され
る方の関係者もあり、私どもも無関心ではおられません。
 一社当たり数千万円から数億円の損失が発生したようです。日本
でバブルが弾けて、現在大変な苦労が続き、試行錯誤の状態が続い
ていますが、今バンコックあたりでは軒並み金融機関が業務を停止
していて、シンガポールも香港も為替の成り行きが心配です。日本
の苦労を今から味会われることになりつつあります。
 この次は上海あたりでバブルが弾けて、それから先がどのように
なるのでしょうか。

■法主さんは、人間が生きて行く為には太陽の恵みが必要であり、
必要以上に使うことは、浪費であると同時に環境の破壊に繋がる、
そこから様々な捩(ねじ)れや軋(きし)みが生じると考え始めて
おられます。
 人間が与えられた分を超えて物を生産し費消する社会の構造は、
何処かが間違っていると考えておられます。人間が生まれてから死
ぬるまでの「分」とはどのような量に相当するのでしょうか。
 分相応の生活をしていれば、国土の疲弊も地球の環境破壊も避け
られたのでは無いかと思いを巡らせておられるようです。
 分相応と言う量はとても難しい概念です。例えば、日本は中国と
共同で管理する漁業区域の協定に調印しましたが、日本の周囲は海
に囲まれています。日本の水産業者が大西洋から地中海に至る地域
まで漁労に出掛けていることは皆さんもご存じですね。
 新潟の水産加工業者がノルウェイから鮭を輸入していることは、
私(能島)がホテルで運搬して来た先方の船長さんから直接に聞き
ました。
 中国の国民数と日本の国民数を比較すれば、中国の漁獲量は桁外
れに小さいと思います。その大国の中国がブラジルで農園を経営し
ている(未確認情報)と聞きますと、何故、どうしてと不思議にな
ります。

 分相応を日本が、もしかしたら超えているかも知れない。捕鯨禁
止は日本を意識した条約であることは間違いなさそうです。
 その捕鯨は実はアメリカが先進国で、主として鯨油を目的として
百年以上も前からやっていたと聞いたことがあります。
 分相応には歴史と国益が絡んでいて、国威の成果のような部分も
あって、世界各国の歴史と植民地の歴史をみれば、全ての先進国が
分相応を超えて動いていた事実が見えて来ます。
 百年前の世界地図を見たいものですが、手元にありません。現在
の世界地図と比較して見ると別の感情が涌いて来ると思います。
 征服と略奪、分相応の概念は、芸術や歴史にも当てはめることが
難しいことが分かります。
 そして、これらの国々は優れて倫理的な宗教によって国民の日常
が支配されていたことも、宗教に関わる私たちにとっては、避けて
通れない問題です。

 神も御佛(みほとけ)様も、その結果として人間に与える恩寵
(おんちょう)を貧しくしているかも知れません。あるいは、人間
が神や佛から与えられる恩寵を適切に受け取れなくなった可能性も
考えてみたいものです。

 地球に降り注ぐ太陽の恵みも、地球の面積も大きく変動はしてい
ませんね。ですが、人間は大変に貪欲に求め、放逸に恵みを消費し
ているかも知れません。

※法主さんの心の底に、産業革命を否定されかねない文明の発達
 についての恐怖があることは、想像だに出来ないことでした。
 だからと言って、適当に現在の便利も享受されていて、それに
 ついての反省や戸惑い、警戒感をあらわにしておられるのでしょ
 う。身の回りを一度点検してみることも大切ですね。

※観音院の電算化は有名で、ホームページも国際的に著名であり、
 この基盤を作られた法主さんが、この環境を受け入れておられ
 ないことを知って愕然(がくぜん)としました。でも、このよ
 うな一面をもっておられることに安心しました。

※法主さんはディジタルな方だと思っていましたら、アナログ的
 認識をされているようです。コンピュータ人間のように錯覚し
 ていましたが、実際は目で見て、手に触って、口に出して、考
 えてみる、そのような思考回路です。

※今回の口述をまとめるのは困難を極めました。細部は調べてく
 れと言われるのですが、意味が分からない、その上に何を話そ
 うとしておられるのか分からない、ご多忙ですから手が取れな
 い、まとまりが付いていないのです。

※外国についての資料は確実ではありません。記憶間違いや判断
 の間違いがあると思われるので、このような細切れな記憶を繋
 いで話したことをお詫びすると言っておられます。間違いをご
 指摘下さい。陳謝し訂正致します。

※「小欲知足」が法主さんの日常生活の根底にあるようです。
 あれも 欲しい、これも欲しい、このような考え方が厭なのだ
 ろうと推察しています。しかし、それとも少し違うように思い
 ます。必要は発明の母なんて、とんでもないこと、人間は貪欲
 に出来過ぎている。うんと謙虚にならなくてはと言われます。


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