桃の花咲く春三月。愛らしい花です。
枯れ草の残る野に、細い若緑の葉を
見つけた時には、量り知れぬ大地の息
吹の神秘を感じます。
下萌(したも)えというのはそうし
た、人目につかないように草の芽が生
え出ることをいい、春の到来を知らせ
るものです。
◆春三月 装いは軽く華やかで
三月は弥生(いやおい)と書きますが、草木が一斉に新芽を出し
て緑美しく生い茂ります。
春草(はるくさ)と読めば柔らかな感じで、春になって萌えいづ
る緑の草、生き生きして草葉が野山や街々にも広がって行きます。
木の芽張り、花の芽ふくらみ、草青み、葉は若緑に輝く…。「木の
芽風」という美しい言葉がありますが、木の芽を温かくはぐくむか
のように吹く春風をいいます。
少し温かな日には、少し遠出して散策するのも良い時節ですね。
山野を眺めると生気感じられ、緑かかったり、ほの赤いような感
じがします。木々が芽吹き生気あふれる山のようすです。
◆桃の節句 華やかな桃の花
三月はお雛さまの節句、雛人形を飾り、桃の花をお雛さまにお供
えしますが、桃の花は果実も縁起が良い花木で、女の児の健やかな
成長を願い、子宝に恵まれるように子孫繁栄が祈られます。
梅や桃の花木は、古く中国から渡来し皆に好まれ、華美で縁起の
良い花として好まれてきました。三月頃に、紅色や桃、白色の五弁
の愛らしい花を開きます。桃の花の咲く下はほの明るい感じで、桃
の木は古くから厄難をはらう力があるとされています。
初花(はつはな)はその季節になって初めて咲いた花をいい、心
喜ばしいものです。
白い端整な花をつけるコブシはモクレン科の木で、漢名は辛夷と
書かれます。山野に咲き、また街々にも植えられます。早春、葉が
出る前に、にぎりこぶしくらいの蕾をつけます。純白で清楚な芳香
ある六弁の大きな花を木の枝に開きます。紫木蘭〔シモクレン〕も
木全体に花を咲かせて、春のゆったりとした空を背景にし、優美な
壮大さが感じられますね。
沈丁花〔ジンチョウゲ〕は庭木によく見られる常緑の木で冬頃か
ら葉々の中に花の蕾をつけ、お彼岸ころに小さな毬(まり)のよう
に花を咲かせる愛らしい花の姿です。この沈丁花は花というよりは
正しくは「萼(がく)」だそうで、管のになっており、中は白色、
外は紫紅色で可愛いらしく、香りが高く、沈香(じんこう)に似て
いるといわれます。白花の沈丁花も愛らしく、漢名は瑞香しいい、
輪丁花という呼び名もあります。
水仙はヒガンバナ科の草で地中海沿岸原産といわれ、古くシルク
ロードを通って東アジアに渡来したといわれています。淑やかで花
の香高く、葉も楚々とした姿は一輪挿しにもよく似合います。
ラッパ水仙、黄水仙、口紅水仙など、八重の品種も多く、春らし
い風情の花です。南の地方の日当たりの良い海岸では水仙が一面に
群生するところも多く、春の海風に花の香が風に運ばれます。
◆足元の雑草に小さな花が…
薺〔ナズナ〕は微小な白い花を咲かせる雑草らしい小さな草で、
菜の花と同じアブラナ科の越年草です。路傍や田畑に咲くごく普通
の雑草で、春の七草のひとつにもなっています。早春若葉の萌え出
たのを食用にします。
ぺんぺん草というのははサヤの形が三味線のばちに似ているから
だそうで、切れ目を入れて耳の側で振ると音がしますね。ぺんぺん
草が生えるというと荒廃した様子を表すそうですが強い雑草なので
しょうか、愛らしい花ですね。
彼岸桜は少し小高木で花季が早く、春の彼岸の頃、葉より先に淡
紅色のたおやかな美しい花をつけて、春のさきがけを知らせます。
◆皆さまからの投稿の紹介◆
▼白川美昌さん〔広島県安芸郡〕
枯れ草の中に見つけた春ひとつ
美しき花を夢見て種蒔けり
幸せのクローバ探す子等の声
▼すみれさん〔広島市安佐南区沼田〕
紅傘に踊るが如き細雪
春うらら老いも若きも声そろえ
▼鶴岡九晃さん〔広島市中区東千田〕
春よ来いみんな笑顔で待っている
空の鳥元気に春を呼んでいる
街に出て楽しい春を見て歩き
季節の変り目、皆さまには体調を整えるよう努めて、春をお楽し
みください。皆さまのお参りを心からお待ちしております。